覆面作家、という説明不足、という逆育てゲーできるだけわかりやすく説明してみるという実験:「コンピューターは0と1の世界」っていうけど、どういう意味?

2016年07月05日

ボンガルド問題は大問題なのだ

ニューラルネットワークは、僕が研究をしていた20年以上前から既に手書き文字の認識ができる、というレベルのものであった。
"教師信号"として数種類の手書き文字を学習させることで、その教師信号に入っていなかった手書き文字についても正しく認識できるようになる、という汎化能力は、ニューラルネットの最大の魅力であった。

僕はこの汎化能力というものが、ニューラルネットにとっての可能性である、と見ていた。
つまり、コンピューターに「直感」と言える処理が可能になるのでは、と。

ニューラルネットが文字を直感的に認識することができる、ということから、僕はさらに飛躍して、文字(=形態)のメタレベル(上位レベル)である、形態理論についても認識できるのだろうか、ということに注目した。
いわゆる「ボンガルド問題」と言われるものだ。 

ボンガルド問題とは、あるルールを規定し、そのルールについては説明しないまま、そのルールに従ったAというグループと、そのルールに従っていないBというグループの複数の図像を与える、というものである。
Aグループの例とBグループの例を複数与えられた人工知能が、それらのルールを発見し、正しくAグループ、Bグループというものを判定できるようになるか、というものである。

当時僕がニューラルネットに与えたボンガルド問題は下記があった。
・左右対称性(シンメトリー)
・重心の位置(上に重心があるか、下に重心があるか)
・水平線を強調したデザイン、垂直線を強調したデザイン

当時の研究に用いた"教師信号"は、たとえば左右対称性については下図のようなものだった。
bongard1
図の左側は「左右対称」=A、右側は「左右非対称」=Bのグループである。
このような組み合わせを数千、ニューラルネットに学習させることで、学習過程では一度も見せなかった新たな図像について、それがA、Bいずれに属するか、ということを正しく出力できるようになった。
つまりこのニューラルネットは、「左右対称性/左右非対称性」という、形態にとってのメタレベルにあたる問題について学習することができたのである。

プログラムをする者にとって、与えられた図像が左右対称か、左右非対称かを判定させるプログラムを書くことはそれほど難しいものではない。
図像の左右の各ピクセルを一点ずつ比べながら、左右で同じかどうかを虱潰しに調べていけばいい。

ここで「左右対称/左右非対称」を学習したニューラルネットは、そういうやり方を学んだわけではない。
与えられた映像が左右対称かそうではないかを瞬時に判定するのである。
これを人間に同じ図像を与え、それが左右対称か否かを判定させる場合と同じである。
人間が与えられた図像が左右対称か否か、という判定をする場合には、左右のピクセル一点ずつを見比べるのではなく、ぱっと見て直感的に「左右対称」、「左右非対称」と言い当てることができるはずである。
ここでは木を見て森を見ず、ということは起こりえない。

ニューラルネットワークが形態そのものの認識だけではなく、そのメタレベルにあたる形態理論、ここでは例として左右対称性、を"直感的に"認識できる、ということの証明のため、僕はそこで与えるサンプルに微妙な"ゆらぎ"を与え、それを学習させることを試みた。

一見、「左右対称」と思える図像に、意図的にずれを発生させ、「厳密には左右対称ではないが、左右対称であると認識できる図像」というものと、まるで左右対称ではない図像の組を数千与え、学習させた。
bongard2
上図の左側のグループは、一見「左右対称」と見えるが、よく見るとそのルールからは外れている。

これらをニューラルネットに学習させてみたところ、これらのゆらぎを含んだ形態理論についても正しく学習できたのである。

僕の修士論文は、ニューラルネットの研究ではなかった。人工知能の研究でもなく、人間の研究だった。
「厳密には形態理論から外れているものについても、その形態理論に合うものである」と認識する人間の能力にこそ興味があった。
つまり、形態理論は形而上のものであり、この世に「左右対称」は存在しないこと。
この世になめらかな面が存在しないにもかかわらず、それを「なめらかな平面」と認識する人間の能力。

そしてそれをニューラルネットがその人間の能力である「ゆらぎを含んだ形態理論を形態理論として認識する」というものを正しく再現させることができる、ということが大きな発見であった。


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myinnerasia at 08:06│Comments(0)コンピューター科学 

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