ピキピキこなけりゃ意味がないツインピークス:ドラマでもなく、ゲームでもなく、ましてやアートでもない、なにものか

2016年05月18日

YMO: 黄色い魔法はとけることなく

「ピキピキくるものをひとつ挙げよ」と言われたら(そんなこと言うヤツはいないけど)、
迷うことなくまず第一にYMOを挙げるだろう。

僕の世代は二つぐらい上のビートルズ世代がビートルズへの思い入れを熱く語ることに
憧れていたわけでもなく、ビートルズを聴いてみても、正直なところ何がいいのかよく
わからなかった。
当時は小学生だったから仕方がないのだろうけど。

でも、当時小学校5年生だった僕にも、YMOは衝撃だった。

ラジオが大好きだった僕は、ある日、”テクノポリス”を聴く。
いつも退屈な歌謡曲しか流れないいつものラジオで。

人間の声のようだけど、機械で作ったようにも聴こえる声で「おっぴにょー おっぴにょー」
というところから始まる謎の音楽(のようなもの)。何の予備知識もないまま初めて聴いた
"テクノポリス"は、小学校5年生には刺激的だった。
そのときラジオではYMOとは言わずに、 「イエローマジックオーケストラ」と紹介していたことを
覚えている。多分まだ"YMO"という略し方はその時にはなかったのかもしれない。 
ピコピコと聴いたこともない電子音で奏でられる音楽を「オーケストラ」と呼ことも新鮮だった。
今になって思えばあれは、生まれて初めてピキピキくる感じを味わった瞬間だったのかもしれない。

それから僕は、イエローマジックオーケストラについて、色々と調べた。
まだ当然インターネットなんかない時代だったから、 調べる、という言葉の意味が今とは
大きく異なる。

メンバーが3人であるということ。
「おっぴにょー」というのは実は"トキオ"と言っている、ということ。 それはボコーダーという
機械を通した人間の声である、ということ。
ピコピコいっているのはシンセサイザーという楽器である、ということ。
日本よりも最初にヨーロッパやアメリカで流行って、それが日本に逆輸入されている、ということ。
おっぴにょーの他には、テレビゲームの音を音楽としていること。日本っぽい音、沖縄っぽい音、
中国っぽい音をまぜこぜにした音。

知れば知るほど何もかもが過激だった。
ヨーロッパのステージに中国の人民服を着て出ていたこと。
そのステージには大きなシンセサイザーとその技術者(松武秀樹)が出ていたこと。 
男なのに化粧をしていること。

小学校5年生にかけられた魔法はどんどん少年を深みにはめていく。 
やがて中学生になり、周りの同級生とは話が合うはずもなく、どんどんと魔法は深まっていく。

YMOにはいつも裏切られ続けた。
「BGM」が出たとき、それまでのピコピコ音とポップ・アートな感じを大きく裏切られた。
それまでとは大きく変わって、暗さが全面に出ている。
その次の「テクノデリック」は、一曲目は明るく、軽い感じがしたのだが、よく聴きこむと全体的に
重苦しさが漂っている。明るいはずなのに暗く重い。だけど無機的な。

YMOのせいで暗い中学生活3年間を送った少年はやがて高校生になる。
そこでYMOにはまたまた大きく裏切られることになる。

「浮気なぼくら」

憧れの坂本龍一とデビッド・ボウイが「戦場のメリークリスマス」に出た。その撮影のために丸坊主
になった坂本龍一は、 まだ丸坊主から伸びかけの中途半端な長さの髪のまま「浮気なぼくら」の
ジャケットに登場する。

「浮気なぼくら」
には大きく裏切られた。

周りの話が合わない同級生たちと何が一番話が合わなかったかというと、それは音楽である。
アイドルが歌う歌謡曲の全盛期に、僕だけがそれらを小バカにし、YMOのような暗い歌を聴く、
というのが自意識過剰な中学生のスノビズムだった。

その拠りどころのYMOがよりによって、「きゅんっ」である。 

そのせいで僕の高校生活はおかしなものになってしまった。
自意識過剰で(わざと)暗く過ごした中学生活とは大きく変わって、はじけてしまった。
それまでの僕を見続けている人がいたとしたら、開き直ったように見えたことだろう。 
まるで「浮気なぼくら」のジャケットで、丸坊主から伸びかけの髪のまま登場している坂本龍一のように。

それでも僕には、いつもいつも裏切り続けるYMO以上の刺激を得られるものがなかった。 
あれから30年以上経った今になってもまだ、僕はYMOになりたいと心から思っている。YMOになるため
の方法を探し続けている。
あれから30年以上経った今になってもまだ、黄色い魔法はとけることなく。 


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