2016年05月29日
Dismaland:憂鬱な虚構・虚構の憂鬱

Dismalandはバンクシーが2015年に5週間だけの期間限定でイギリスでやっていたテーマパークだ。
僕は幸いなことにこの期間中にオランダに行っていたので、ちょっと足を伸ばして一泊二日で行ってきた。
この名前はもちろんディズニーランドをもじったものだが、"dismal"という英単語は"憂鬱"という意味らしく、
その内容もディズニーランドを徹底的に皮肉ったものだった。
そして、(本家のディズニーランドと同じく)、徹底的に虚構を作り上げている。
まず、インターネットでチケットを予約するのだが、これがかなりの人気のうえ、何日かに一度(何日だった
かは失念。。。)の決められた時間しかチケットの販売がないので、かなりの争奪戦になる。
さらに、そのチケット販売サイトからチケットを買う方法が不案内すぎてわかりづらい。
これは全部わざとやっていることだと思われる。テーマの"憂鬱"はもうチケット争奪戦から始まっている。
開催されていたのは、ロンドンから特急電車で2時間ぐらいかかるウェストンスーパーメアという小さな
街なのだが、駅に着いても何の表示もない。普通、こういう催し物は大々的に案内表示などがある、と
思うのだが、そこも当然dismal。
地面に下記のような表示だけがあったとさ。

そして到着。
そこには当日券待ちの長い列が。4時間待ちとのこと。
僕はインターネットで憂鬱な思いをしながらGETした前売りチケットがあったので、
その長い列とは違う、方へ。前売りチケットは入場日時が決められている。
前売りチケットの入り口にもその入場時間待ちの列があることはあるのだが、そんなに並ぶ
はずはない。
。。。はずなのに、なぜかこちら側だけ、行列用のレーンがあり、しかも無駄に長い。
前売りチケットで来た人は、誰も並んでいないこのレーンを延々と歩かされる。なぜかみんな
ニヤニヤと笑いながらなのだが。

肝心の中身については、、、バンクシーやダミアンハースとなどの現代アート好きには
たまらない内容だった。
ただ、そこに展示されている作品よりも、このDismaland全体が作り上げている虚構が
なんとも面白かった。 全てにおいて徹底的。
その徹底している度合いは本家ディズニーランドに負けない。
ミッキーマウスのような耳を付けた係員は皆憂鬱な顔をしていて、トイレはどこかと聞いても
教えてくれない。
アトラクションはどれも古く薄汚く見えるように作られている。
ビーチやプールサイドにあるような折りたたみベッドがところどころに置かれているのだが、
陽に焼けて色あせている。
館内にずっと流れ続ける古臭い音のハワイアン。時々そのハワイアンがブチッと止められて、
子供の声で館内アナウンスのようなものが流れるのだが、それをよく聞いてみると、
ジェニー・ホルツァーっぽいことを言っている。(後で調べたら、やっぱりジェニー・ホルツァー
だったようだ。オレすげえ)
それも時々は館内放送が始まるようにハワイアンが途切れてブチッとマイクのノイズがあるの
だが、何事もなかったのようにまたハワイアンに戻ったり。これはあるあるネタっぽかった。
とにかく全体で憂鬱をテーマに虚構を作り上げている、ということと、本家ディズニーランドを
徹底的に皮肉っている、ということで、その虚構性を笑っている、という二重構造になっていた。
最後に出口のところには、こんな皮肉が。。。(「出口はおみやげ売り場を通った向こう側」)
最後まで徹底している。
